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「第5回21世紀ミュージアム・サミット」レポート

こんにちは。「美術検定」実行委員会事務局です。
今回は、2012年2月4、5日に湘南国際村センターで開催された「第5回21世紀ミュージアム・サミット」をレポートします。このレポートから、美術館の機能とは何かがあらためて見えてくるかもしれません。


「ミュージアム・サミット」とは、国内外の美術館・博物館関係者や実践者たちが21世紀のミュージアムのあり方について討論するサミットで、2004年より隔年で開催されています。前回の第4回では、講演者も交え参加者全員で議論するワールド・カフェ形式を中心に行われました。第4回のサミット記録集である書籍「100人で語る美術館の未来」では、「NPO はじめまして、美術館。」代表でもあるアートナビゲーター・氏川こずえさんのインタビュー記事も掲載されています(氏川さんの活動に関しては当ブログ「おやこで美術館にいこう!はじめまして、美術館。」でも紹介しています)。

今回の第5回ミュージアム・サミットは、午前は2名の基調講演とワールドカフェ形式でのディスカッション、午後はマネジメント、リテラシー、アーカイブ、パブリックリレーションという4つのテーマごとの分科会という構成で進行され、ディスカッションや分科会では密度の濃い話し合いが行われました。参加者の中には、アートナビゲーターの方の姿も見受けられました。

開会の挨拶は、主催の財団法人かながわ国際交流財団理事長であり東京都写真美術館長の福原義春氏によって行われました。昨年の東日本大震災を通し、人々の心の拠りどころとしての文化の存在が見直されるなか、ミュージアムは何を残し何を伝えていけるのか、今の、未来のミュージアムを皆で知恵を出し合い考えていければ、という今回のサミットの主旨説明がありました。

初日の作家・池澤夏樹氏の基調講演では、「過去は未来である」というキーワードのもと、未来を生み出す過去の蓄積であるミュージアムの機能と、池澤氏自らのミュージアムの活用方法が紹介されました。そのひとつに、大英博物館で好きな作品を選び、それが作られた場所に行き、その場所の文明や記憶を知る、という例が取り上げられました。そのような、モノと場所の関係を考え能動的に結びつける行為をミュージアムのダイナミックな営みと称し、今後のミュージアムの在り方が話されました。

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池澤夏樹氏の基調講演後、ワールドカフェ形式でのディスカションが行われた。

二日目の英国シティー大学客員教授・DEMOSアソシエイトのジョン・ホールデン氏の講演では、イギリスでの文化に対する評価の変遷と共に、市民、専門家、行政の関係と文化における3つの価値、本来的価値(主観・直感)、手段的価値(商業・経済)、制度的価値(行政・公共)からのミュージアムの在り方が紹介されました。また、文化そのものが多様な価値を持ち始め、ミュージアムの存在や役割が変化してきている現在、この3つの価値を対等かつ全体的にとらえながらミュージアムの機能を考える必要性が示されました。

分科会では、各会5~6名ほどのグループに分かれ、熱い議論が展開されました。マネジメントでは、ミュージアムをなりたたせる基盤、営むための運営理念や資金調達、評価基準などについてが、リテラシーでは、参加者個々のミュージアム体験を通し現状の課題を見つけ、個人、社会、未来にとってのミュージアムの利用方法が話し合われました。アーカイブでは、「選ぶ、残す、伝える、使う」の4つのキーワードのもとに、資料のデジタル化も含めてアーカイブとは何かが議論され、パブリックリレーションでは、寸劇とワークショップ方式でミュージアムの集客プランが立てられました。

各分科会の成果報告終了後は、前述のホールデン氏や大原美術館長の高階秀爾氏はじめ美術館長クラスの監修者の方々による統括討議が行われました。初日に講演された池澤氏曰く、“情報の津波”が押し寄せる現在、過去から現在、未来をつなぐミュージアムは今後どのように時代の変化に応えていくか、またホールデン氏の講演や分科会で取り上げられた4つのテーマを通し、あらためて利用者である市民と地域、ミュージアムとの関係が示唆されました。

このサミットで、現在の美術館や博物館などミュージアムがかかえる問題の具体的な施策が見出せたわけではありませんが、様々な分野のミュージアム、図書館や文化施設、企業や一般の人が一堂に集まり、それぞれの立場を超えてフラットな関係で議論し合ったこと自体が意義あることのように思いました。21世紀の美術館がよりよき機能を発揮するためにも、こうして人が集まり、顔を合わせて有機的に話し合うことのできるこのサミットが今後も継続的に開催されれば、と期待しています。

撮影=藤島亮
取材・執筆=高橋紀子(「美術検定」実行委員会事務局)

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