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美術検定オフィシャルブログ~アートは一日にして成らず

「美術検定」のオフィシャルブログです。

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アートナビゲーターのための学びWorkshop~作品ガイド実践!

「美術検定」事務局です。
今回は、アートナビゲーター・深津さんが企画された、アートナビゲーターのための学びWorkshop vol.1「実践!作品ガイド&ナビゲーション編」」をレポートします。


新緑が美しく覆い茂る5月26日土曜の午後、リニューアルオープンして間もない東京都美術館のスタジオで、ワークショップは開催されました。
 このワークショップを企画された深津優希さんは、損保ジャパン東郷青児記念美術館東京国立近代美術館のボランティアとして、解説ガイドや対話ナビゲーターなどのギャラリーガイドを実践されているアートナビゲーター(当ブログでも深津さんの活動レポートを紹介しています!→http://bijutsukentei.blog40.fc2.com/blog-entry-41.html)。今回ワークショップを企画されたきっかけを、深津さんにおたずねしてみました。

「美術検定は古今東西の美術史はもちろん、博物館学や、美術に関する時事問題まで幅広く出題されるなかなか大変な試験ですよね。せっかく何年も勉強したのですから、合格して終わりではなく、アートナビゲーターのブランド力も上げてゆきたい。そのためにも、学びあい交流する場があれば良いなと思って企画しました。学びの内容としてガイドトークを取り上げた理由は、一番活動の場が多いように思ったからです。私自身も2つの美術館でガイドスタッフをしていますし、今回の参加者の中にも美術館ボランティアをしている方は何人かいらっしゃいました。ガイド未経験の方にとっても、多様なスタイルのガイドトークに触れて、これから何かをする際の参考になればと思いました。」

そして当ブログ編集担当・染谷ヒロコさんの全面協力のもと、実現に至りました。
 
ワークショップ当日は15名のアートナビゲーターが集合し、3つのグループに分けられました。参加されたアートナビゲーターには、美術館にボランティアとして所属しギャラリーガイドを実践されている方だけでなく、今回初めてガイド実践する方も多くいらっしゃいました。
冒頭に、グループ内でアートカードを用いたゲームを行ない、参加者の緊張がほぐれた後、深津さんよりこのワークショップの目的、「普段の活動で困っていることについて、自分なりの答えを見つける」「参加者の多様な活動経験から得られる“技”を共有」「アートカードやSNSなど、ツールの利用と交流」という3つのキーワードが説明されました。続いて、「来館者はどんな人?」というテーマでグループディスカッションが始まりました。ギャラリーガイドを実践されている方からは、何よりも来館者に喜んでいただけることが嬉しい、という発言がありました。「知識を得られた」「また来たい」と言っていただいた例もある反面、ガイドの力量を試すような来館者も実際にいるといった話もありました。

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3つのグループに分かれてワークショップは始まりました

次に、染谷さんより、ニューヨーク近代美術館(MoMA)が来館者向けプログラムの開発に用いた理論、美的発達段階についての説明がありました。これは「人はいかに思考するようになったのか」という認知発達理論をもとにした研究で、美術鑑賞では5つの段階によって美的発達が起こるというもの。美術を鑑賞することでどのような思考が起こるか、という話に、参加者は真剣に耳を傾けていました。

そして、いよいよグループ内でガイド(ト-ク)合戦。参加者には、あらかじめ4つの作品の中から1つを選び、その作品について10分ほどガイドをしてもらう、という宿題が与えられていました。作品は、歌川広重《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》、東山魁夷《緑響く》、ヨハネス・フェルメール《芸術の寓意(画家のアトリエ)》、アンリ・マティス《王の悲しみ》の4つで、一番多く選ばれていたのは歌川広重でした。ガイドの形式も、解説型、対話型など参加者が事前に定め、参加者それぞれのトークの“技”が披露されました。手作りのフリップや資料、iPadを用いながら説明をする方、自分の体験と結びつけながら対話を進める方、時代も描かれた内容も全く違う作品との比較から始まり、対話を通し本作品の魅力につなげる方など、15名の個性あふれるバラエティに富んだガイドが繰り広げられました。

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自作の作品資料を用いて、初ガイド実践!   iPadと、びっしり書き込まれた作品についてのメモも

ガイド(トーク)合戦終了後は、全体で各グループでのトークを振り返りました。解説型と対話型といったガイドのスタイルの違いや、どのように鑑賞者のレベルや知識欲を探っていくか、また違うレベルの鑑賞者が集まった際にどのレベルに設定するかなど、どのようにしたら鑑賞者が作品への興味を深めていくサポートができるかが話し合われました。
最後に、深津さんより、トークに役立つ美術鑑賞教育プログラムのさまざまな資料や、アートナビゲーター同士の交流やスキルアップの活用方法として当ブログや美術検定TwitterなどのSNSが紹介され、ワークショップは終了しました。

参加されたアートナビゲーターの皆さんからは、「作品について初めてトークしましたが、他の皆さんの“技”に感心のしきりでした」「こんなトークがここで聞けるなんて!お金を払いたくなりました」「こんなスタイルのガイドもあるのだと勉強になりました」「脳内満足度の高いワークショップでした」と一堂満足されたご様子。企画者の深津さんも、「『トークのスゴ技の共有化』が果たせてよかったです!この日が初ガイドだった方々も、すばらしいトークで仲間を魅了していました!同じ作品をガイドするにも、本当にいろんな切り口がありますよね。今後も『ガイドしあう会』『アートカードで遊ぶ会』などアートナビゲーターが学びあい、交流できる場所を皆さんと一緒につくって行きたいと思います。」と、すでに次回のワークショップのアイデアが生まれてきているようでした。


取材・執筆=高橋紀子(「美術検定」事務局)

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