美術検定関連イベント「レクチャー&ワークショップ」レポート
こんにちは。鎌倉市在住のアートナビゲーター、高谷守です。
今回は、6月30日土曜の午後に開催された、美術検定関連イベント「レクチャー&ワークショップ『作品のみどころが分かる!』140字で紹介する美術辞典(Artwiki)を作ろう!」をレポートします。
今回は、6月30日土曜の午後に開催された、美術検定関連イベント「レクチャー&ワークショップ『作品のみどころが分かる!』140字で紹介する美術辞典(Artwiki)を作ろう!」をレポートします。
前日までの梅雨寒から一転、夏を思わせるような暑さの中、「マウリッツハイス美術館展」の開幕初日を迎えた東京都美術館の2階スタジオに、総勢19名のアートナビゲーターが集まりました。
参加者には事前課題として、美術館で撮影可能な絵画作品のみどころをツイッターと同じ140字以内で紹介する文章を書き、作品の写真とともに提出する宿題が課されていました。
まずは、今回講師を務められた京都精華大学非常勤講師のアートライター、藤田千彩さんによるレクチャーから始まりました。藤田さんが執筆者の一人として担当されている、ウェブサイトartscape現代美術用語辞典の中での、「色価」という用語の解説文の作成を例に、分かりやすい文章を追求する過程が紹介されました。
続いては、140字で「作品のみどころ」の紹介文を書くワークショップです。
まず、参加者が提出した事前課題のいくつかが講評され、藤田さんからコメントを頂きました。作品紹介文を書く時のコツや注意事項について一通り説明を受けた後、いよいよ紹介文作成の演習です。内容は、あらかじめ分かれて席についた5つのグループ毎に、その場でそれぞれ異なる絵画作品が与えられ、その作品が掲載された展覧会図録や書籍を参考に、140字以内で紹介文を作るというもの。30分という短い制限時間の中で、材料を読み、記述内容を考え、原稿用紙に書き落とす作業のすべてをこなさなければなりません。あちこちで、参加者のうめきとも悲鳴ともつかない声が上がりました。
ちなみに、各グループに与えられたテーマ作品は以下の5点。いずれも、紹介文を書くには手ごわいものばかりでした。
1. カミーユ・コロー《ナポリの浜の思い出》 (国立西洋美術館所蔵)
2. 長谷川等伯《牧馬図屏風》 (東京国立博物館蔵)
3. ジョルジュ・ブラック《画架》 (横浜美術館蔵)
4. 小林古径《出湯》 (東京国立博物館蔵)
5. 草間彌生《No.B White》 (千葉市美術館蔵)
30分の制限時間が尽きる頃には、皆さん青息吐息。かつて経験した、美術検定1級の記述式試験問題が思い出されます。ただし、今回はたったの140字。何を書くか、何を落とすのか、迷うことしきりです。時間が過ぎてもなお、必死になって書く手を止めずに動かし続けている人もみられました。
書き上げた紹介文をグループ内で読み合った後、グループ毎にジャンケンをし、負けた人の紹介文がグループの代表として提出されました。いよいよ紹介文の発表です。
藤田さんが一番目の作品から順に、絵画作品のスライドを映しながらできたばかりの紹介文を講評されました。紹介する内容や使用する言葉などについて多少活発な議論もあり、予定の時間をオーバーし全グループの紹介文講評が終わりました。
この日のレクチャー&ワークショップでは、事前提出課題と当日のワークショップで書いた紹介文をもとに、藤田さんから「作品のみどころ」を記述するためのさまざまなポイントが説明されたのですが、それらを私なりにまとめてみると次の3点になりました。
《「作品のみどころ」を記述するためのポイント》
1. 客観的に書く。ただし、作品を見ればすぐに分かるような内容はいれない。
2. 作品の周辺の知識・情報(作家の説明、時代のこと、素材・技法など)を含めて書く。
3. 美術専門用語を使い過ぎず、読みやすい表記を心がける。
また、表記方法について、特に印象に残ったものは以下のとおりです。
・書いた文章を声に出して読み上げてみる。長いと感じたら読点(“、”)を挿入する。
・「…思う」のような主観的な表記はせず、「…だ」などと言葉を言い切る。
・「おすすめ」と書く場合には、会話の中で使う時よりも押し付けがましくなりがちなので注意する。
講評の中で藤田さんがコメントされた、「今の時代は長い文章だと読んでもらえない」という言葉に、私は思わず耳をそばだててしまいました。また「絵を見ただけでは分からない、一見どうでもいいような周辺情報も入れておく」というのも、日頃読み手を意識して執筆するライターという職業としての経験から出たものと感じました。
文章によるアートナビゲーションを行う場合には、ギャラリートークなど直接相手と言葉を交わすことができる“話し言葉によるアートナビゲーション”とはまた違った、上記で述べたようなポイントを注意する必要があるのでしょう。しかも、その読み手はツイッターのような短い文章しか受け付けなくなっている。そのような場合は、今回プロのアートライターからご紹介いただいた留意事項が大いに役立つと思いました。
ここから先は、アートナビゲーターとしての私たちの腕の見せどころ。今回のレクチャー&ワークショップで学んだことを、今後の活動に十分に活かしていきたいものです。
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プロフィール/小学校時代から図工・美術が苦手科目だったのですが、歴史好きもあり古今東西の美術史に足を突っ込み始めました。腕試しとて2009年に美術検定2級を受験、2010年には1級に合格。現在は、休日を中心に足繁く美術展に通い、作品の新たな魅力を発見しつつ修練を積み続ける日々。受験にあたっては、とにかく美術作品を観ること、アート活動について考えることをおすすめします。あとは練習問題をこなし、弱点分野を把握し、足りない知識を市販の書籍で補給しました。記述式問題は、過去問題と模範解答を十分に分析し、出題の傾向やクセをつかみ自分なりの解答戦略を立ててみると効果的です。
参加者には事前課題として、美術館で撮影可能な絵画作品のみどころをツイッターと同じ140字以内で紹介する文章を書き、作品の写真とともに提出する宿題が課されていました。
まずは、今回講師を務められた京都精華大学非常勤講師のアートライター、藤田千彩さんによるレクチャーから始まりました。藤田さんが執筆者の一人として担当されている、ウェブサイトartscape現代美術用語辞典の中での、「色価」という用語の解説文の作成を例に、分かりやすい文章を追求する過程が紹介されました。
続いては、140字で「作品のみどころ」の紹介文を書くワークショップです。
まず、参加者が提出した事前課題のいくつかが講評され、藤田さんからコメントを頂きました。作品紹介文を書く時のコツや注意事項について一通り説明を受けた後、いよいよ紹介文作成の演習です。内容は、あらかじめ分かれて席についた5つのグループ毎に、その場でそれぞれ異なる絵画作品が与えられ、その作品が掲載された展覧会図録や書籍を参考に、140字以内で紹介文を作るというもの。30分という短い制限時間の中で、材料を読み、記述内容を考え、原稿用紙に書き落とす作業のすべてをこなさなければなりません。あちこちで、参加者のうめきとも悲鳴ともつかない声が上がりました。
ちなみに、各グループに与えられたテーマ作品は以下の5点。いずれも、紹介文を書くには手ごわいものばかりでした。
1. カミーユ・コロー《ナポリの浜の思い出》 (国立西洋美術館所蔵)
2. 長谷川等伯《牧馬図屏風》 (東京国立博物館蔵)
3. ジョルジュ・ブラック《画架》 (横浜美術館蔵)
4. 小林古径《出湯》 (東京国立博物館蔵)
5. 草間彌生《No.B White》 (千葉市美術館蔵)
30分の制限時間が尽きる頃には、皆さん青息吐息。かつて経験した、美術検定1級の記述式試験問題が思い出されます。ただし、今回はたったの140字。何を書くか、何を落とすのか、迷うことしきりです。時間が過ぎてもなお、必死になって書く手を止めずに動かし続けている人もみられました。
書き上げた紹介文をグループ内で読み合った後、グループ毎にジャンケンをし、負けた人の紹介文がグループの代表として提出されました。いよいよ紹介文の発表です。
藤田さんが一番目の作品から順に、絵画作品のスライドを映しながらできたばかりの紹介文を講評されました。紹介する内容や使用する言葉などについて多少活発な議論もあり、予定の時間をオーバーし全グループの紹介文講評が終わりました。
この日のレクチャー&ワークショップでは、事前提出課題と当日のワークショップで書いた紹介文をもとに、藤田さんから「作品のみどころ」を記述するためのさまざまなポイントが説明されたのですが、それらを私なりにまとめてみると次の3点になりました。
《「作品のみどころ」を記述するためのポイント》
1. 客観的に書く。ただし、作品を見ればすぐに分かるような内容はいれない。
2. 作品の周辺の知識・情報(作家の説明、時代のこと、素材・技法など)を含めて書く。
3. 美術専門用語を使い過ぎず、読みやすい表記を心がける。
また、表記方法について、特に印象に残ったものは以下のとおりです。
・書いた文章を声に出して読み上げてみる。長いと感じたら読点(“、”)を挿入する。
・「…思う」のような主観的な表記はせず、「…だ」などと言葉を言い切る。
・「おすすめ」と書く場合には、会話の中で使う時よりも押し付けがましくなりがちなので注意する。
講評の中で藤田さんがコメントされた、「今の時代は長い文章だと読んでもらえない」という言葉に、私は思わず耳をそばだててしまいました。また「絵を見ただけでは分からない、一見どうでもいいような周辺情報も入れておく」というのも、日頃読み手を意識して執筆するライターという職業としての経験から出たものと感じました。
文章によるアートナビゲーションを行う場合には、ギャラリートークなど直接相手と言葉を交わすことができる“話し言葉によるアートナビゲーション”とはまた違った、上記で述べたようなポイントを注意する必要があるのでしょう。しかも、その読み手はツイッターのような短い文章しか受け付けなくなっている。そのような場合は、今回プロのアートライターからご紹介いただいた留意事項が大いに役立つと思いました。
ここから先は、アートナビゲーターとしての私たちの腕の見せどころ。今回のレクチャー&ワークショップで学んだことを、今後の活動に十分に活かしていきたいものです。
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