美術検定オフィシャルブログ~アートは一日にして成らず

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高校生×「美術検定」〜団体受験校の先生たちにインタビュー

こんにちは、「美術検定」事務局です。
大地の芸術祭をはじめ野外展示もにぎやかな季節ですが、みなさん、熱中症に気をつけてアートを楽しんでください。

さて、今回は、「美術検定」を団体受験されている2つの高校の先生にお話を伺いました。子どもから大人へと向う時期の高校生にとって、「美術検定」はどんな意味を持つのでしょうか?


創る子どもたちの基礎の1つに

最初にお話を伺ったのは、秋田公立美術工芸短期大学附属高等学院の岸上先生です。この学校は、文部科学省のカテゴリーでいくと、いわゆる「高校」ではなく「専修学校」に分類される美術専門の学校です。工芸美術科とデザイン科があり、生徒の多くは、美術工芸やデザイン系の大学や専門学校に進学します。

——貴校の生徒さんは、制作系の生徒ですよね。「美術検定」は美術の知識を身につける検定ですが、どうして取り入れられたのですか?

岸上「本校には制作系の授業はたくさんあるんですが、いわゆる「美術史」を学ぶ授業がないんです。美術検定4級の出題範囲には、美術史の中でも重要な作品が含まれていますし、「美術検定」のために勉強することは、作品をたくさんみるいい機会になると考えています」

——デザインや美術工芸に携わる子どもたちにも、いわゆるファイン・アート作品をみる機会はあったほうがいい、ということでしょうか。

岸上「生徒たちはもの創り中心にがんばっているんですが、ともすると作品をみることがおろそかになりがちなんです。美術や作家にふれる、歴史のなかにある様々な表現や思想に触れることは、生徒たちの制作に反映されます。いわば生徒の基礎作りととらえています」

——授業のなかで検定用の対策などを実施されることがありますか?

岸上「受験は希望制にしていますので、授業で、というものはありません。もともと実技の授業だけで時間割は満杯(苦笑)。ただ、作品はたくさん見て欲しいので、授業の作品制作に関連する作品を紹介する、ということはほかの教員も含めて意識をしています」

——では、受験する生徒さんはどんな勉強をされているのですか?

岸上「一昨年、昨年と団体受験をしたのですが、その初年度は受験希望者を集めて対策講座をしました。その時は過去の出題問題の解説—印象に残りやすく覚えやすいように作家や作品のエピソードをまぜたもの―を中心にしました。あとは専門書籍が大学図書館に揃っていますので、画集をみるよう勧めたりとか」

——受験によって生徒さんに何か変化は見られますか?

岸上「一番わかりやすいのは、主体性のある子の発言によって周りの子どもたちも引っ張られる、と言いますか、興味の幅が広くなり、ステップアップしようという意識が高まってくることです。生徒の場合、私たちが歴史や蘊蓄を話すより、友だちの話の方がスッと入ってくるんですね。生徒自身がこんな作品があるんだ、とか、この作品はこんなことが描かれているとか。生徒同士の学びが広がるのがよくわかります」

——それは私たちも嬉しいです。友だち同士で勉強する環境があるのもいいですね。では、最後に、これからの「美術検定」に希望することや期待があれば、お願いします。

岸上「“検定”という響きから実用的な印象を受けますが、実はそうではありませんよね……。ですからひとり一人の生活を豊かにする検定、という社会的な認知度を上げて欲しいことです。すると、合格すれば生徒の自信や評価につながりますし、生徒たちにも受験をもっと勧めることができます」


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将来、現場で使える引き出しを増やしてほしい

さて、次の団体受験校は、高知県立岡豊高等学校です。この高校は、普通科に大幅な自由選択制を取り入れた普通科総合選択制高等学校で、書道・音楽・美術が学べる芸術コースがあります。そのコースで教鞭をとる、駄場先生にお話を伺いました。

——美術系の高校では美術史が必修となっていますが、貴校ではそのために「美術検定」を取り入れられたのですか?

駄場「本校では美術史の授業があるのは、現在は3年生だけなのです。教科書は1年生の時から持たせているのですが、課題の導入に使う程度で、実際にそれを使うのは3年生。授業はほとんど実制作中心です」

——そうなんですか。では、検定を受検しているのは3年生ですか?

駄場「3年生は検定シーズンは卒業制作にかかるので、ほとんどが2年生。興味がある生徒は1年生でも受けます。「美術検定」の勉強を通じて、自分は作るより美術史に興味があった、と気付く生徒もいるんです。地方には美大がないので、進路がちょっと大変になりますが」

——「美術検定」が子どもたちの進路にも関わるとは責任重大です。褌をしめてかからなければ……。しかし、生徒さんの大部分は制作系に進む訳ですよね。その生徒に「美術検定」を勧められるのはどんな理由からでしょう?

駄場「高校生の間に、生徒が将来、制作の現場で生き延びるための引き出しを増やして欲しいと考えています。大学や専門学校を卒業したばかりのときは、彼らは最新のものを身につけているのかもしれません。しかし、これだけ物事の変化が早い時代、そんなものはすぐ色あせてしまいます。その時に彼らを支えてくれるものの1つが、多くの作品との出会いや社会とのつながりである美術史の知識だったりすると思います」

——具体的にはどういうことが彼らの役に立つのでしょう?

駄場「例えば時代による作品の違い―様式—を知ることも、2D3D問わず、デザインを考える上でアイデアの源になります。作品を読み解いていくこともまた、制作にさまざまなヒントをもたらしてくれるはずです」

——「美術検定」が生徒さんの将来に備えた武装の1つにもなるんですね。こちらも本当に頑張らないと。ところで、検定を受けるのは希望する生徒だけですか?

駄場「現在はそうです。受験料も高校生にとっては高いですから(苦笑)。書籍類は学校の図書室に全級ひとそろい購入してもらったのですが、1人1冊というわけにはいかないのが現状です」

——確かに受験料は社会人でも高く感じるかも……。では、受験対策については受験希望の生徒を集めてやっていらっしゃるのですか?

駄場「練習問題をわたして、個人的に添削するのが主です。高校生ですから、4級中心の受験です。ただ去年4級に合格した生徒が数名いますので、今年は少し変わるかもしれません」

——検定をきっかけに、生徒さんに何か変化は見られますか?

駄場「最初にお話しましたが、制作より理論に興味が湧く生徒が出てきたことは象徴的ですね。そして1人そういう子がいると周りによい影響を与えてくれます。周囲の子どもたちも一緒に、学ぶことに対して、非常に前向きに意欲を見せるようになってきました」

——それは私たちにも嬉しい変化です。では、最後の質問です。これからの検定に対してご希望などはありますか?

駄場「書籍に学割があったり、価格をもう少し抑えてもらえると、高校生でも手が届くようになるかと。それから社会的な認知度の向上を期待しています」

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「美術検定」が子どもたちの成長に少しでも役に立てたらうれしいと思うと同時に、身の引き締まる思いになるお話を伺えました。
お2人の先生、ご協力、ありがとうございました。

(聞き手・文=染谷ヒロコ 本ブログ編集)

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