日本美術を楽しく体感!「おもしろびじゅつワンダーランド」展
こんにちは。「美術検定」事務局です。
今回は、サントリー美術館で開催中の、デジタル技術とアナログ手法を駆使し、日本美術を楽しく鑑賞する展覧会を紹介します。
今回は、サントリー美術館で開催中の、デジタル技術とアナログ手法を駆使し、日本美術を楽しく鑑賞する展覧会を紹介します。
東京・六本木の東京ミッドタウン内に位置し、国宝、重要文化財を含む約3000件の美術作品を所蔵するサントリー美術館は、日本美術を中心とした企画展を開催しています。2007年のリニューアル開館後は、ミュージアムメッセージ「美を結ぶ。美をひらく。」のもと、教育普及活動も積極的に行なっていますが、今回はじめて教育普及そのものにフォーカスした展覧会、「来て、見て、感じて、驚いちゃって!おもしろびじゅつワンダーランド」展が企画されました。
展覧会場の入口に入ると、天井にはプラネタリウムのように星が流れ、文様が現れています。何の文様かの答えは、さらに進んだ正面に展示されていました。

天井に映し出されたこの文様は… 国宝『浮線綾螺鈿蒔絵手箱』の裏側の文様でした
この手箱の表面は、沃懸地に螺鈿の「浮線綾文」で飾られています。そしてこの蓋裏には、金蒔絵で約30種の草花文様が描かれているのですが、それは持ち主しか見ることができません。今回は、その蓋裏の文様が星の世界として表現されたようです。螺鈿の箱の中はこのような神秘的な空間なのかもしれない、と幻想的な世界に誘われました。
さらに進むと、ススキが茂る空間が現れました。壁面には、ススキや秋草が描かれた『武蔵野図屏風』が展示されています。屏風からススキが飛び出したかのごとく、そこはまるで武蔵野の地のように、絵画の中にいるような錯覚を覚えました。

実際のススキ林の奥に、ススキが描かれた屏風が並列して展示されています
薩摩切子など江戸時代に本格的に生産が始まった和ガラス。その中でも日本人になじみ深い藍色のガラスが、カーブがかった天井のドーム内に並べられ、照明によってその表情を変えていました。

藍色の和ガラスが、照明によって印象を変化させています
伝土佐光高・筆の『洛中洛外図屏風』は、大きなタッチパネル端末で詳細を見ることができるようになっていました。パネルに触れると、指先がまるで虫めがねになったかのように触ったところが大きくなり、説明の文章が現れました。

タッチパネルに触れると、その場所が拡大され、説明文が表示されます
以前同館で開催された「誇り高きデザイン 鍋島」展でも人気を博した、「鍋島」という江戸時代の最高級の磁器。この「鍋島」の磁器を自らデザインするコーナーでは、多くの人が参加されていました。もっとも、本物のお皿に描いたりするのではなく、タブレット端末を使い、無地のお皿の上に「鍋島」で使用されていたモチーフを使ってデザインするというもの。デザインした後は壁面のスクリーンに公開されます。自分がデザインしたものだけでなく、他の人がどんなデザインしたかが一堂にみられ、「本物と負けないデザインだね」という声も聞こえました。
まずは3種のお皿から好きなものを選び、

好きな文様を拡大・縮小しお皿の上に配置します

デザイン終了後は、壁面のスクリーンで講評会!?どれも力作ぞろいです
このようにデジタル技術を駆使したものだけでなく、歌川広重・画の影絵遊びを実際に行なえるコーナーや本阿弥光悦・作の赤楽茶碗が巨大化したものなど、アナログ手法も負けてはいません。そして、キャプションなどにもちょっとした工夫が見られ、日頃は静かな印象のある日本美術の展示会場も、今回は賑やかに感じました。

キャプションの形や見せ方にもひと工夫がみられます
本来、屏風や漆工品、陶磁器などは日本人の暮らしの中で実際に使われていたものでした。それが美術作品として評価され展示される時には、手にとることはおろか、ガラス越しに遠目からみるということもしばしばです。今回「日本美術のテーマパーク」として、こうしたデジタル技術とアナログ手法を駆使し、子どもから大人まで楽しみながら日本美術そのものを体験、体感できる本展は、“美術の魅力”を伝えるという点で、美術館の新しい教育普及の在り方を示唆しているように思えました。
+++++
「来て、見て、感じて、驚いちゃって!おもしろびじゅつワンダーランド」展
主催:サントリー美術館 (東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3F)
会期:2012年8月8日(水)~9月2日(日)(会期中は無休)
開館時間:10時~18時(金・土は20時まで開館)
入館料:一般1000円、大学・高校生800円、中学生以下無料
取材・執筆=高橋紀子(「美術検定」事務局)
展覧会場の入口に入ると、天井にはプラネタリウムのように星が流れ、文様が現れています。何の文様かの答えは、さらに進んだ正面に展示されていました。


天井に映し出されたこの文様は… 国宝『浮線綾螺鈿蒔絵手箱』の裏側の文様でした
この手箱の表面は、沃懸地に螺鈿の「浮線綾文」で飾られています。そしてこの蓋裏には、金蒔絵で約30種の草花文様が描かれているのですが、それは持ち主しか見ることができません。今回は、その蓋裏の文様が星の世界として表現されたようです。螺鈿の箱の中はこのような神秘的な空間なのかもしれない、と幻想的な世界に誘われました。
さらに進むと、ススキが茂る空間が現れました。壁面には、ススキや秋草が描かれた『武蔵野図屏風』が展示されています。屏風からススキが飛び出したかのごとく、そこはまるで武蔵野の地のように、絵画の中にいるような錯覚を覚えました。

実際のススキ林の奥に、ススキが描かれた屏風が並列して展示されています
薩摩切子など江戸時代に本格的に生産が始まった和ガラス。その中でも日本人になじみ深い藍色のガラスが、カーブがかった天井のドーム内に並べられ、照明によってその表情を変えていました。


藍色の和ガラスが、照明によって印象を変化させています
伝土佐光高・筆の『洛中洛外図屏風』は、大きなタッチパネル端末で詳細を見ることができるようになっていました。パネルに触れると、指先がまるで虫めがねになったかのように触ったところが大きくなり、説明の文章が現れました。

タッチパネルに触れると、その場所が拡大され、説明文が表示されます
以前同館で開催された「誇り高きデザイン 鍋島」展でも人気を博した、「鍋島」という江戸時代の最高級の磁器。この「鍋島」の磁器を自らデザインするコーナーでは、多くの人が参加されていました。もっとも、本物のお皿に描いたりするのではなく、タブレット端末を使い、無地のお皿の上に「鍋島」で使用されていたモチーフを使ってデザインするというもの。デザインした後は壁面のスクリーンに公開されます。自分がデザインしたものだけでなく、他の人がどんなデザインしたかが一堂にみられ、「本物と負けないデザインだね」という声も聞こえました。

まずは3種のお皿から好きなものを選び、

好きな文様を拡大・縮小しお皿の上に配置します

デザイン終了後は、壁面のスクリーンで講評会!?どれも力作ぞろいです
このようにデジタル技術を駆使したものだけでなく、歌川広重・画の影絵遊びを実際に行なえるコーナーや本阿弥光悦・作の赤楽茶碗が巨大化したものなど、アナログ手法も負けてはいません。そして、キャプションなどにもちょっとした工夫が見られ、日頃は静かな印象のある日本美術の展示会場も、今回は賑やかに感じました。


キャプションの形や見せ方にもひと工夫がみられます
本来、屏風や漆工品、陶磁器などは日本人の暮らしの中で実際に使われていたものでした。それが美術作品として評価され展示される時には、手にとることはおろか、ガラス越しに遠目からみるということもしばしばです。今回「日本美術のテーマパーク」として、こうしたデジタル技術とアナログ手法を駆使し、子どもから大人まで楽しみながら日本美術そのものを体験、体感できる本展は、“美術の魅力”を伝えるという点で、美術館の新しい教育普及の在り方を示唆しているように思えました。
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「来て、見て、感じて、驚いちゃって!おもしろびじゅつワンダーランド」展
主催:サントリー美術館 (東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3F)
会期:2012年8月8日(水)~9月2日(日)(会期中は無休)
開館時間:10時~18時(金・土は20時まで開館)
入館料:一般1000円、大学・高校生800円、中学生以下無料
取材・執筆=高橋紀子(「美術検定」事務局)
| 美術館&アートプロジェクトレポート | 12:01 | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑